これは何処か遠い、誰も知らないような町のお話です。
その町はとても栄え、空を自動車が飛んだり、
飛行機が地を潜ったりしています。
そんな町に、マモという名前の女の子がいました。
女の子はさびしがり屋で、人形を集めるのがとても大好きです。
そんなマモはある日、持ち主を寂しくさせないように、
いつも優しく語りかけてくる人形が売られるという話を聞きました。
マモは驚きました。
「今まで私はお人形さんに話しかけてきたけどれ、何も返してくれなかった。
でも、このお人形さんは私に話しかけてくれて、寂しさなんか消してくれるんだ」
そんなわけでマモはその人形を買おうと思い立ち、
人形を買うためのお金を小さな手で握りしめて、
人形屋さんにテトテトとかけていきました。
「おじさん、あのお人形さんをください!」
すると人形屋さんのおじさんは店の奥からその人形をひっぱり出してきて
こういいました
「このお人形さんは喋るんだよ。知ってるかい?」
もちろんマモは知っていたので、
「知ってるわ。だから私はそのお人形さんが欲しいの」
と答えます。
「そうかい。それならよかった、たまに知らなくてびっくりする子がいるからね」
と言って、おじさんはハハハと笑いました。
「こんな説明、君にはいらないかもしれないけど、一応説明しておこう
このお人形さんの口はここ。ここから言葉を話すんだ
だからここをふさいだりしたら、君とお話しできなくなってしまうんだよ
わかったかい?」
「わかったわ。気を付ける」
マモはおじさんの説明にうんうんと頷きました。
そしてお金をおじさんに渡すと、それはもううれしそうな顔で
家までテッテッテとかけていきました。
家に帰ると、マモはすぐにお人形さんを取り出し、
人形に息を吹き込みました。
「ワタシの名前はペコロ!
マモのために毎日楽しく踊ってみせます!」
「うれしい!私を寂しくさせないように、毎日踊ってね!」
とマモは喜びながらペコロとはしゃぎました。
その日はマモにとって欠かせない日となったのでした。
幾月か時が過ぎたころでしょうか
マモの部屋から、ペコロの楽しい声が聞こえなくなりました。
なぜなら、マモがペコロの口をふさいでしまったからなのです。
それは少し前の頃、マモが笑いながら、
「ちょっと五月蠅いから、お口をふさいじゃおっと」
そんな軽い行動で、ペコロの言葉は消えたのでした。
更に幾月か過ぎたころ
マモの部屋からペコロの姿は消えました。
なぜなら、マモは新しいお人形さんを買ったからです。
それは少し前の頃、マモが笑いながら
「ただ踊ってばかりじゃつまらないわ、新しいお人形さんを買おっと」
そんな軽い行動で、ペコロの姿は消えたのでした。
新しい人形がきたマモの部屋のクローゼットの奥に、
ペコロは一人で泣いていました。
『私はただマモに喜んでもらいたかっただけなのに』
『私はただマモに抱きしめてもらいたかっただけなのに』
声を亡くしたペコロは心の中で、ずっとそういっていました。
今、ペコロがどうしているかは、
誰もわかりません。
確かに言えることは、マモのような人が
今日も人形を買っては忘れ去っているということでしょう。
おしまい。