これは、皆さんの知らないようなある国のお話です。
その国は完全な平和とは言えませんでしたが、
誰もが穏やかに暮らしていました。
さらに付け加えるのならば、
子供たちは7つになったら学校に行って、
毎日大切なことを教われるような、素晴らしい国だということです。
これはその国ならどの学校でもやっているものですが、
ある学校の9つの子供が通う教室に、
真っ白でふわふわの毛並みを持つ、白うさぎがやってきました。
ルシフ先生がかごに入れて持ってきたとき、
子供たちの前でこう言いました。
「このうさぎも、皆と同じ命を持っています。
命はとても重くて、大切なものです。
これから皆で大事に育てていきましょう」
「「はーい」」
先生が話し終わると
、
子供たちは無邪気に喜びながらうさぎに近づいて行って、
皆で触ったり、なでたり、抱き上げたりしました。
それからというもの
毎日子供たちは交代でうさぎの面倒をみて、
朝から晩まで可愛がっていました。
三月ほど経った頃、
地震や火事があった時のために、
避難訓練を行うことになりました。
もちろん、訓練なので本当に揺れたり、燃えたりはしていません。
お昼が過ぎたころ、真っ黒なスピーカーから、
『訓練です。火事が起きました。教室にいる生徒はすぐに避難してください』
と流れ、避難訓練は始まりました。
うさぎを飼っているあの教室でも避難が始まりましたが、
仕度が終わったころ、
一人の生徒、リアがルシフ先生に聞きました。
「先生、うさぎのモモはどうしますか?」
すると先生は、
「うさぎより皆の命が大切です。
何故なら皆が死んだら取り換えは効きませんが、
うさぎなら、また新しく飼えばいいでしょう?」
リアは少し疑問に思いましたが、先生が、
「さぁ、早く外へ避難しましょう。
ここに居たら本当に火事があった時、生き残れませんよ」
と急かすので、
そのまま皆で避難しました。
そうして避難訓練は何事もなく終わり、
『これなら本当に火事があっても、地震があっても大丈夫だ』
と、誰もが思えました。
何年か経ったある時、
その学校では本当に火事が起きました。
それでも、避難訓練をやっていたので、
誰一人欠けることなく、避難することができました。
火事で焦げた教室が綺麗になったころ、
また新しいうさぎをもってきたので、
何もかもが元通りになったそうです。
おしまい。